子どもが「学校に行きたくない」と訴えたら、「無理させずに休ませたほうがいい」と言われています。かといって休んでも一日中ゲームや動画ばかりとなると、学習や生活への影響も心配です。長年、不登校当事者やその親を取材してきた不登校ジャーナリストの石井しこうさんに、不登校になると動画やゲームになぜ没頭するのか、うまく付き合う方法や親の見守り方について聞きました。

MENU 没頭することで悩みから離れられる 「ゾンビ◯万体倒したよ!」と言われて心配に 子どもにルールを決めさせて 心配な日々はいつか終わりが来る

没頭することで悩みから離れられる

――学校を休んで一日中ゲームや動画ばかり……。なぜそんなに没頭するのでしょうか?

 私も中学2年生から不登校でしたが、途中から本当にゲーム一色でした。睡眠は3〜4時間、食事やお風呂以外はずっとゲーム。サッカーチームを運営する会社のゲームで、うまく運営することに熱中していました。そのときに親が心配したのは、体重がかなり減ってやせてしまったこと。そんなふうにがっつりハマってしまうケースもあるんですよね。

 では、なぜそんなにハマるのかというと、当時の自分には「原因」がわからないんですよね。後になって、同じような経験をした当事者同士で話したことがあるのですが、精神的に不安で、悩みや「忘れたい」という気持ちがあったのではないかと。学校に行きたくなくて眠れなくて夜通し悩んで、そのまま朝を迎えて……。本当に頭がおかしくなるくらいつらいんです。だから、いったんゲームをしたり動画を見たりして気休めすることで、不安や悩みからちょっと離れることができる。それが成功体験になっていって、命綱をつかむように不安な気持ちをかき消すように、ゲームや動画に没頭するという子は多いと思います。また、「嫌なこと」に対する心理的ストレスの発散もあると思います。

――嫌なことを忘れるために、何か別のことに没頭したいんですね。ただ、親としてはそれがゲームや動画じゃなくてもいいのでは…と思ってしまいそうです。

 そうですよね。ただ、そう思ってしまうのはもう世代の違いで、親世代は自分の親からアニメや漫画が「目の毒」と言われていたし、さらにその上の親世代は「映画が毒」、上の上の世代は「小説が身を滅ぼす」と言われていた時代がある。若い世代を虜にするものって、上の世代からすると「ちょっとな……」って思うものなんですよね。

次のページへ子どもへの影響は?
著者 開く閉じる
石井志昂
石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、中学2年生から不登校。フリースクールに通ったのち、NPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材。現在はNPO法人を退社しジャーナリストとして活動中。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。

1 2 3