一度始めたら大人でもやめることの難しい動画やゲームは、親子バトルの原因になりがちです。特に発達特性が強い子の場合、過集中になったり、切り替えが苦手だったりする傾向も。発達科学コミュニケーション代表で臨床発達心理士の吉野加容子さんに、上手に付き合うためのコツを聞きました。

MENU 「やめさせる」のではなく、「認めていく」 うまく切り上げるコツは「始め方」!

「やめさせる」のではなく、「認めていく」

 ――大人でも難しい動画やゲームとの付き合い方。発達特性の強いお子さんにはどんな傾向が見られますか?

 動画やゲームに関する悩み相談は本当に多く寄せられます。お子さんの付き合い方に困っている方がたくさんいらっしゃると感じますね。付き合い方の傾向としてあげられるのは、まず、過集中になりやすいこと。集中するあまり、動画やゲーム中に声をかけても聞こえていない場合が多いんですね。ADHD傾向がある子に見られます。

 そして、行動の切り替えが苦手な子も多いです。一度始めると周囲がどう働きかけてもやめられないこともあります。これはASD(自閉スペクトラム症)やADHD傾向の子に見られます。さらに、「もうやめなさい」と禁止すると、親が驚くほどキレ出すこともあります。ADHDでも衝動性の強い子に多いですね。

 ――こういった反応があると、親としてはゲームや動画をやめさせるべきか頭を抱えます……。とはいえ、今の時代、完全にやめさせることも難しいですよね。

 発達特性があるお子さんの場合は、なぜ動画やゲームばかりするのかを理解することも大切です。学校がある日や疲れたときは、動画やゲームをしながらボーッとすることでストレスを解消したり心を回復させたりしているんです。「やめさせる」よりは「認めていく」ことが大事です。

 また、これからはAIを使いこなしていく時代ですよね。ゲームやYouTubeのようなデジタルツールは当たり前に使えないと困ります。ここは、「うまく使いこなせるようになれば」程度にとらえましょう。ただし、動画やゲームをぼーっとやるだけだと受動的な脳の使い方になっているので、「能動的な脳の使い方」にシフトするような使い方ができるといいですね。うまく利用すればメリットもたくさんあります。

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吉野加容子
臨床発達心理士 吉野加容子

発達科学コミュニケーション代表。企業の脳科学研究や、医療機関での発達支援に携わってきた経験をいかし、独自の発達支援プログラム「発達科学コミュニケーション」を開発。発達に悩む多くの親子を支援する。近著は『発達障害・グレーゾーン』の育てにくい子が3ヶ月で変わる 非常識なおうち発達支援』(パステル出版)。

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