支給制度の概要はこうだ。対象は大学生や大学院生、留学生、短期大学生、専門学校生、日本語学校生ら。アルバイト先が休業するなどして収入が激減した場合を想定している。金額は10万円、または20万円。
そのうち外国人留学生には、成績や出席率に要件がついた。上位3割程度が対象となり、労働目的で入国する留学生を排除する目的があったとみられる。
だが、留学生の生活はまさにアルバイトなどに支えられている。上智大学大学院2年生で、ネパール出身のダリマ・タマンさん(23)の例を見よう。
シングルマザー家庭に育った。2013年に来日し、アパートで一人暮らし。自宅そばのインドカレー店でのバイトは新型コロナ前、出入国管理法で決められた上限の週28時間入れていた。月々のバイト代は8万円程度で、他に民間の財団から7万円の奨学金をもらっている。
3月末から店の営業時間は短くなり、シフトが減った。5月からスーパーのバイトを始めたが、バイト代は減る見込みだ。まかないが出ないのも痛手で、切り詰めた生活を送っている。
当面の問題は、半年分の授業料の32万円だという。5月上旬が支払いの期限だったが、大学院側との話し合いで猶予してもらっている。学費に回していた奨学金を生活費にも充てざるを得ず、支払いまであと15万円足りない。6月上旬に入る最初のスーパーのアルバイト代は家賃などに回す予定で、まだ授業料まで手当てできない。福祉関係の仕事をしているネパールの母親もコロナ禍で仕事が減っており、援助は頼めない。日本での就職を希望しているが、かばんやスーツは友人から借りるつもりだ。
「差別とも言える日本政府の対応に納得がいきません」(タマンさん)
外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は、今回の政府の対応が「著しい人権侵害」だと考える。特に、留学生にだけ給付の要件を設けたことと、朝鮮大学校を対象外にしたことだ。日本が批准している人種差別撤廃条約、自由権規約、社会権規約などを挙げて、厳しく非難する。
「こうした国際人権諸条約に違反する支給の仕組みになっています」
(編集部・小田健司)
※AERA 2020年6月15日号より抜粋