大手居酒屋チェーン「和民」を展開するワタミフードサービス元社員の森美菜さん(当時26)が、入社からわずか2カ月後の08年6月に飛び降り自殺した問題で、神奈川労災補償保険審査官が労災適用を認める決定を下した。
森さんの時間外労働は月140時間に及んでいた。午前5時までの勤務が1週間続くこともあったという。休日も「早朝研修会」やリポート提出などで、十分に休める状態ではなかった。それなのに、残業代もロクに支払われない――森さんと同期入社の元店長は証言する。問題は、あまりにも過酷すぎる労働条件=長時間労働と低賃金だ。
渡邉会長は東日本大震災後、岩手県陸前高田市の参与となり、現地で「経営勉強会」を開催している。
その陸前高田市で、ワタミグループの弁当宅配会社が2月1日、雇用を創出しようと、宅配の注文受け付けを担うコールセンターを開設した。だが、これが物議を醸した。県の定める最低賃金「時給645円」だったのだ。
先の元店長が言う。
「なぜ時給を最低ラインにする必要があるんでしょう。従業員の生活を守るという視点が欠けている。ワタミは何も変わっていない」
ワタミ側はこう説明する。
「時給を最低賃金の645円でスタートさせたのは、周辺の需給バランスが崩れると、他の企業が参入しにくくなるからです。時給は就労状況で上がっていくシステムになっています」(広報グループ)
ちなみに、この時給は全国でも最低額。もう少し"慈悲の心"があってもいいのではないか。
※週刊朝日 2012年4月6日号