アメリカで英語はできるようになったかって? アメリカには計5年くらいいたし、外国人レスラーともちゃんとしゃべっているし、大丈夫だと思っていたよ。それが、帰国子女のレスラー、安生洋二に言わせると「天龍さんの英語は大概がブロークンですね」だと! 言われたときはショックだったな(笑)。でも、コミュニケーションは取れるし、意思が通ればブロークンでも問題ないよ!

 さて、海外の話が続いたけど、もちろん国内の思い出もたくさんある。まずは京都。結婚するまで修学旅行で行くような京都しか知らなかったんだけど、京都出身の女房が、町の裏の裏まで教えてくれて、すっかり好きになった。中でも印象深いのが、京野菜の漬物で作った寿司。「木屋町 蘭」というお店の寿司で、俺が女房の実家に初めて行ったときに出前で取ってくれて、これがとても美味しいんだ! と、ここまでは俺の思い出なんだが、そのときの女房の記憶では「レスラーが野菜を食って力が出るか!」と俺が文句を垂れたらしく、「この人は田舎者でどうしようもない、と思った」と今でも言われる(苦笑)。

 まあ、俺の実家が農家で、野菜は安価という印象があって、プロレスラーだから見栄を張ってしまったんだな……、きっと。でも、本当はすっかり気に入ったんだよ。馬場さんにも食べさせたいと思って、京都での試合が終わった後、新幹線に持ち込んだこともあるくらい。あのときは車内に漬物の匂いが充満したけど……馬場さんは食べて喜んでくれたよ。

 思い出の食べ物といえば、相撲の下っ端の時に北海道で食べたジンギスカンもあるね。田舎から東京に出てきて、羊肉を初めて食べたときは「臭い肉だなぁ」なんて思っていたけど、北海道の巡業で大鵬さんの後援会の人たちが招待してくれて、原風景のような牧草地に鍋を置いて、野外で食べたジンギスカンが美味しかった! これでジンギスカンの味を覚えて、北海道に行くとジンギスカンを食べる機会が多くなったね。

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