紫外線による日焼けが気になる季節が到来した。実は、皮膚がんのうち日本人に多い基底細胞がん、有棘細胞がんは、紫外線の影響が強く、特に基底細胞がんは頸から上にできやすい。がんが小さく、悪性度が低ければ、切除後の皮膚再建の必要もなく、通院手術での切除で完治も可能だ。専門医が、がんができやすい部位や治療法を解説する。
【データ】男女差はない!皮膚がんにかかりやすい年代や症状とは?
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皮膚がんのなかで発症頻度が高いのが、表皮にある基底細胞ががん化する基底細胞がん、有棘細胞ががん化する有棘細胞がんだ。いずれも70代以上に多く、紫外線の影響が大きい。
表皮にあるメラノサイトという細胞は、メラニン色素を産生する。メラニン色素は皮膚の色を決める以外に、紫外線を吸収して皮膚を守るという働きももつ。皮膚が白い白人はメラニン色素が少ないため、紫外線の影響を受けやすく、日本人の数十倍、皮膚がんになりやすい。日本人でも、色が白く、日光に当たったあとで赤くなる人は、黒くなる人に比べて皮膚がんのリスクが高い。
基底細胞がん、有棘細胞がんともに、農業や漁業など外での仕事が主で、日常的に紫外線を浴びやすい人や、例えば海水浴などで真っ赤になって水ぶくれができるほど一度に大量の紫外線を浴びた場合などがリスク要因となる。
どちらも紫外線が当たりやすい頸から上に多く、黒・赤・褐色などのほくろやしみ状の皮膚病変が現れ、徐々に大きくなる、あるいは以前からあったほくろなどの大きさや色調、形に変化が現れるなどで気づくことが多い。潰瘍化して出血するケースもあるが、ほとんどは痛みやかゆみはない。
■ 基底細胞がんは潰瘍化や出血も
基底細胞がんの7~9割は顔にでき、多くは黒く、ほくろのように見える。とくに紫外線が当たりやすい目や鼻の周辺、額などにみられる。日本人に多いのは結節潰瘍型と呼ばれるタイプだ。えぐれて潰瘍になりやすく、出血を起こす。しかし、病変が大きくなっても転移を起こすことはまずない。では、放置していいのだろうか。都立駒込病院皮膚腫瘍科部長の吉野公二医師は次のように話す。
「転移はなくても、潰瘍化して出血したり、なかには顔の半分にまで広がるようなケースもあって、顔にそのような傷があるのは、患者さんのQOL(生活の質)を下げることにつながります。やはり早い段階での治療が必要といえるでしょう」