斉藤以外では、今も現役でプレーしている宮西尚生(日本ハム)との対戦も興味深い。歴代ホールド王として知られるサウスポーの宮西は、右打者にも強さを見せているものの、やはり魅力は左打者に対する強さ。変則的なサイドスローから放たれるスライダーは、左打者には背中から突然ボールが来るように見え、これまで抜群の効果を示してきた。

 一方でイチローは左投手を全く苦にしておらず、メジャー通算でも左投手との対戦成績は打率.329とハイアベレージをマークしている。2人の対戦が実現していれば、間違いなく終盤の緊迫した場面でもあり、お互い勝負強さも折り紙つきだ。どういった攻防が繰り広げられていたか、想像が膨らむ。

 正統派の戦いということからは外れるが、日本ハムでプレーした多田野数人との対戦も面白い。多田野は2004年から2シーズン、イチローの所属していたマリナーズと同じア・リーグのインディアンスに在籍したが、メジャー時代は対戦はなかった。

 多田野はインディアンスなどでプレー後、2008年に帰国して日本ハム入り。メジャーからの“逆輸入右腕”として注目が集まったが、やはり多田野を一躍有名にしたのは、テレビ中継の画面から消えるほどの“超山なりスローボール”。

 日本時代にはワンバウンドのボールをライト前ヒットにしてみせたイチローは、仮に多田野が必殺のスローボールを投げたとしたら、必ず手を出したはず。果たして、どういう結果になるか予想もつかないが、実現して欲しかった対戦の一つではある。

 その他にも、イチローが海を渡ってから生まれた名投手との対戦で見たいものは多い。イチローが在籍したオリックスと同じパ・リーグでは金子千尋(現・日本ハム)、涌井秀章(現・楽天)、杉内俊哉(元ダイエー、巨人)らが素晴らしい投球を見せていた。イチローの後に海を渡った松坂大輔(現・埼玉西武)、ダルビッシュ有(現・カブス、元日本ハム)、田中将大(現・ヤンキース、元楽天)らとの対決はメジャーではなく、日本でも見たかった。

 また、イチローがメジャーに移籍後の2005年には交流戦も始まっており、セ・リーグの一流投手との戦いも火花散るものとなっただろう。前田健太(現・ツインズ、元広島)、井川慶(元阪神)、菅野智之(巨人)ら先発投手陣との戦いはもちろんだが、中継ぎでも藤川球児(阪神)、岩瀬仁紀、浅尾拓也(ともに元中日)ら球史に残るリリーバーたちとの対決も実現して欲しかったというファンも少なくないだろう。

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かつてのような名勝負は令和にも生まれるか?