その一例が、桜井にとって年上の音楽仲間でもある小林武史だ。My Little Loverのakkoと結婚したときにも、長年つきあっていた有名女優を捨てたといわれたが、その後、一青窈と不倫して離婚。さらに、一青との再婚がうわさされながら、新たにプロデュースした女性歌手との交際もささやかれるなどした。

 ではなぜ、桜井が繰り返さずに済んでいるかといえば――。じつは彼ならではのコツというべきスタンスがあるように思える。それがうかがえるのが「ロッキング・オン・ジャパン」00年9月号に掲載されたインタビューでのこの発言だ。

「おわかりの通り、ちょっと面倒なことが抜けたんで(笑)」

 離婚と再婚というひと区切りを、彼はそう表現した。この「面倒なこと」という言い方は当時、非難もされたが、正直な実感だろう。そして、注目したいのは彼が、面倒だとわかったらもう繰り返さないというスタンスを恋愛以外でもとってきたことだ。

 たとえば、ミスチルは「NHK紅白歌合戦」に一度だけ出場。曲目は北京五輪のテーマソング「GIFT」だった。その9年後、朝ドラ「べっぴんさん」の主題歌を担当した際、これは「紅白」再出場もあるのではと思われたが、そこはスルーした。おそらく、一度出てみて、ちょっと面倒だということに気づいたのだろう。

 また「輝く!日本レコード大賞」(TBS系)でミスチルは二度、大賞を受けているが、1994年は本番を欠席。史上初の珍事で、話題になった。しかし、2004年は出席して歌と演奏を披露している。これは、受賞曲「Sign」が同局のドラマ「オレンジデイズ」の主題歌だったことに加え、前回の欠席でいろいろ批判もされたのが面倒に感じられたからではないか。

 いずれにせよ、面倒だとわかればそれ以上踏み込まないのが、彼のスタンスなのだ。これはけっして容易なことではない。というのも、世の中の面倒はだいたい、欲望から生じるし、アーティストたるもの、欲望は人一倍持ち合わせているからだ。まして、大物になれば、それを存分に満たせる立場でもある。

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個人的なスリルと快楽を求める槇原