ゲリラ豪雨が発生しやすい今夏
同じく昨年の台風19号で大きな被害が出た千曲川沿いの長野市北東部の長沼地区は、まさに「洪水の常襲地帯」だと津金氏は言い、こう続ける。
「北陸新幹線が水に浸かった長野新幹線車両センターは、長野県内でも有数の地盤の悪い地域。もし、地震の揺れへの対策がなされないなら地震で大きな被害を受ける可能性があります」
今年の夏の天候の見通しについて、海洋研究開発機構の土井威志(たけし)研究員(気候力学)はこう説明する。
「熱帯太平洋の東部で水温が平年より低くなるラニーニャ現象が起こり始めています。ラニーニャ現象が発生すると、日本付近で太平洋高気圧の張り出しが強くなる傾向があります。今年の夏は猛暑になりやすいと予測しています」
日本気象協会の気象予報士、安齊理沙さんは言う。
「気温が高くなると大気の状態が不安定になって積乱雲が発生しやすくなり、今年の夏もゲリラ豪雨が例年通り発生しやすくなると思います」
秋以降は、秋雨前線や台風の影響で大雨の心配があるという。それ以前に安齊さんは、梅雨末期の大雨への警鐘を鳴らす。
「18年の西日本豪雨、17年の九州北部豪雨といずれも梅雨末期の7月上旬でした。今年も西日本を中心とした梅雨末期の大雨への警戒が必要です」
平年の梅雨明けは九州北部が7月19日ごろ、中国、近畿、東海、関東甲信はいずれも同21日ごろ、東北北部は同28日ごろ……。まさに、これからの季節に注意が必要だ。
秦准教授が提言する。
「行政は中長期的に持続可能な都市の在り方を考え、水害リスクの高い地域の開発を制限したり、災害リスクの低いエリアに住宅を誘導する『居住誘導』を行ったりするなど対策をとる必要がある。一方で住民は、命を守るための避難行動を考えるとともに、経済的な被害が出た場合に備えて水害保険に入るなど、万が一に備える対策を取っておくことが重要です」
災害は起きてから対応を考えても遅い。コロナ禍の今、荒ぶる自然を正しく恐れ、避難と備えを確かめたい。
(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年7月13日号