記録的な豪雨に見舞われた九州南部。熊本県では球磨川など河川の氾濫や土砂崩れが相次いだ。毎年のように起きる予測不可能な記録的豪雨。もはや水害はどこで起きても不思議ではない。それでも注意すべき危険性が高い場所は存在する。過去の事例からも裏付けられるその特徴とは。AERA 2020年7月13日号では「水害」と「地震」を徹底調査。その中から、ここでは集中豪雨と水害について解説する。
【記録的な豪雨で1メートル以上浸水する世帯数比率が高い35の自治体はこちら】
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福岡県久留米市。市防災対策課職員は緊張した声で振り返る。
「市内各所で道路が冠水し、林道で倒木があり通行止めになりました。かなり集中して降ったので、すごい雨でした」
6月27日朝、活発化した梅雨前線の影響で、九州各地を記録的な大雨が襲った。なかでも久留米市は、午前8時3分までの1時間に92.5ミリの猛烈な雨に見舞われ、観測史上1位の雨量になった。一夜明け雨はやんだが、この職員は引き続き雨への警戒を緩められないと話す。
災害は地震だけではない。毎年のように大雨による水害が各地で牙をむく。もはや「記録的豪雨」はいつどこで起きてもおかしくない状況になった。
水害に弱い地域はどこなのか。
「今や特定の場所が危ないとは言えなくなっています。逆に、今まで大丈夫だったからこれからも安心とは言えず、どこで被害が起きてもおかしくない状況になっています」
と警鐘を鳴らすのは、地域防災に詳しい山梨大学の秦(はだ)康範准教授だ。
大都市多くに浸水想定
日本には3万5千本近い河川があるが、主に国が管理する1級河川は100~150年に一度、都道府県が管理する2級河川は50年に一度の雨を想定しダムや堤防などを整備している。つまり、これまでの雨の降り方であれば、災害を防ぐことはできた。だが近年、雨の降り方は変わり、いつどこで大雨が降るかわからず水害が起きやすくなったと指摘する。
「しかも日本の河川は急流で、一気に海へ流れるのが特徴です。河川の流域や下流部は、河川が運んだ砂礫(されき)や泥で形成された平野が広がり地盤は軟弱。氾濫によって水害が起きやすい地形に、人口の大部分が集まっているのです」(秦准教授)
秦准教授が調べた「市町村浸水人口」(2015年)のなかから、大雨により1メートル以上浸水する世帯数などを自治体ごとに並べた。