グラウンドで、盛岡大付の関口清治監督は選手たちを鼓舞した(c)朝日新聞社
グラウンドで、盛岡大付の関口清治監督は選手たちを鼓舞した(c)朝日新聞社
アップを終えた選手たちに、「甲子園中止」を告げる副島浩史監督(c)朝日新聞社
アップを終えた選手たちに、「甲子園中止」を告げる副島浩史監督(c)朝日新聞社

 中止になった夏の全国高校野球選手権大会。その地方大会の代替となる大会が7月1日、全国に先駆けて岩手県で開幕した。全国47都道府県の各高野連が独自に大会を開催するため、地域によって大会名が異なったり、1試合7イニング制の独自のルールを設定するところもある。岩手県では地区予選を経て、その後は県大会をトーナメント制で実施していく。

【写真】唐津工・副島監督の「甲子園決勝逆転満塁本塁打」の瞬間がこちら

 「甲子園」という夢が途絶えたいま、選手や監督たちはどのような思いで大会に臨むのか。

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■盛岡大付(岩手県) 関口清治監督「思わず泣きそうになった」

 5月20日、小雨が降るグラウンドで、盛岡大付の関口清治監督(43)は3年生部員37人と向き合った。夏の甲子園中止が正式に発表されてから初めてのミーティングだ。グラウンドには報道陣もつめかけていた。関口監督は、毅然とした態度でこう言ったという。

「みんなが甲子園を目指してこの学校に来たことは知っている。悔しい思いはみんなあると思う。だが、(甲子園という)見返りがなくたって努力することの大切さを3年間で学んできたはずだ。そして県高野連の方たちが、なんとか代替大会を開催しようと努力してくださっている。この大会で優勝して初めて、『本当は甲子園に出場できた』という本当の悔しさを感じることができる。だからその大会に全力を尽くそう」

 盛岡大付は春夏計15回の甲子園出場を誇る強豪校だ。部員の半数以上は県外から進学し、親元を離れて寮生活を送っている。彼らの夢は甲子園。そのことを、関口監督は誰よりも理解している。

 だが、選手たちに大きな動揺はなかった。ミーティングでは決意したように真っすぐ関口監督を見つめ、涙を流す選手はいなかったという。選手たちは大会の中止が決まる1週間ほど前から、ミーティングで中止の可能性を共有してきた。「中止になっても、これまで通り全力で練習に取り組もう」と主将が呼びかけ、選手たちは覚悟を決めていたのだ。

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「思わず泣きそうになった」サプライズ