実際に山中先生の経歴をみると、その行動力に驚くものがあります。臨床医師になりたくて神戸大学の医学部へ進学後、整形外科の仕事をしていたが退職し、その後は大阪市立大学の薬理学教室で研究を始める。それからアメリカに留学をし、 帰国したのち大阪市立大学に戻るも、奈良先端科学技術大学に移り iPS 細胞の開発に成功し、さらにそこから京都大学に移っています。
ちなみに私は薬学部に在籍しており、定員は80人でした。でも、その中で卒業後、なんと10人以上が、医学部に編入するか入り直したのです。 「本当に薬学部に行きたい人にとっては邪魔な存在だよなぁ」と思いつつ、卒業した後から再スタートを切るという勇気はすばらしいものだと思いました。
東京大学の農学部を卒業してから医学部に入り直した人もいますし、獣医学部で6年間勉強した後、医学部に入り直した人もいます。
日本は、大学や就職の仕組み的には、自分の本当にやりたいことを、やりにくい環境かもしれません。ただしそれは、本気でやろうと思えば自分で変えられるものでもあります。
■行動を起こすかどうか迷ったら、死ぬ間際を想像する
人が死ぬ間際に後悔する10のこと、があります。その中の一つは「他人の目を気にせずにもっと自分のやりたいことをやればよかった」というものです。私は何か行動を起こすか起こさないか迷った時は、変な話ですが、自分の死ぬ間際や、お葬式のシーンを想像することにしています。
こうすると、死ぬ間際の私が過去を振り返った時、この行動に関してどう思うだろうと俯瞰して考えられます。また勇気が出なくても、「どうせ何年後かにはみんな死ぬんだし」というような気分になれるので、その場の一時的なためらいの気持ちを捨てることができます。
死ぬ間際に後悔するのではなく、常にこの「挑戦する気持ち」を失わないようにしたいものです。息子が中学生頃になったら、挑戦した人の話を聞かせていこうと思っています。
過去に聞いた印象に残っている話で、カーネル・サンダースがケンタッキーフライドチキンで成功したのは70歳を超えてからだ、というものがあります。このことを思い出すたびに、「年齢で、自分がやりたいこと、挑戦する気持ちを抑えてしまうのは、とてももったいないことだ」と改めて心の中で意識しています。もちろん年齢だけではなく、環境のせいにして、自分の行動を制御するのはやめようと決めています。