現在は外資系の企業も増え、実力主義、成果主義になっていき、終身雇用や 年功序列の時代は終わったと言いますが、実際はとても消えたとは言えない状態です。そもそも新卒採用をすることで、企業の年齢バランスをとっている部分があるのも確かで、愛着心から転職をしにくくなれば、結局は年功序列の会社になっていきます。
一生のうちに、やりたいことが変わっていくのは、人間として自然な感覚ではないかと思います 。例えば転職や、学部の変更は、日本では海外に比べて、しにくい仕組みになっています。
先日、ベンチャー企業を立ち上げた友人と話をした時、「大学なんて途中でやめてもいい」「会社に入って別のやりたいことが見つかればそちらにいけばいい」とサバサバしたことを言っていましたが、一度大企業に入ってしまった人は、そんなふうに考えるのはなかなか難しいのではないかと思います。「せっかく大学を卒業したのだから」「せっかくこの会社に入ったのだから」という保守的な考え方が、自分のやりたいこと、可能性を狭めているように感じます。
私が就職の時に、「大きい会社から小さい会社に移るのは簡単だけど、小さい会社から大きい会社に入るのは難しい」というアドバイスを周りから何度も聞きました。ですから保険的な意味で、とりあえず大企業を選ぶ人もいるでしょう。そして一度決めてしまったら、ほかのところに移るのは難しいという環境は、特に大企業のほうが顕著のように思えます。
ノーベル賞を取った山中伸弥先生が、「ノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進先生の言葉に救われた」という話があります。利根川先生は山中先生に対して、「面白いことを科学者はやるべきであって別に持続性なんてなくたっていいと思う。僕はわりと飽きるたちですから、一生同じテーマをやるなんて考えられない」と伝えたことがあるそうです。
山中先生は、学生に向かって、「ある実験が予想外の結果をもたらすことがある」と話しました。先生は最初、動脈硬化の研究をしていましたが、その遺伝子はがんに関係しているということが判明したそうです。そこから改めてがんの研究を始めたら、今度は、がんにはES 細胞が重要だと分かり、さらに再生医療の研究を始めて iPS 細胞でノーベル医学生理学賞をとるに至ったとのこと。そして、「興味を追い求めていくことが大切であると思います」という言葉で締めくくりました。