世界各地のスポーツイベントにさまざまな変化をもたらした新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、競馬界にも及んだ。特に海外遠征などによる馬や人の移動には各国とも慎重な姿勢を崩しておらず、日本競馬界の悲願である凱旋門賞の制覇は今年も難しいと言わざるを得ない状況だ。
6月に締め切られた凱旋門賞の一次登録に日本からエントリーしたのは、昨年から長期の欧州遠征を続けて現地に滞在しているディアドラのみ。10月の本番直前に追加登録も可能だが、すでに古馬の大将格であるアーモンドアイや宝塚記念を圧勝したクロノジェネシス、さらにはともに無敗でクラシック二冠を制したコントレイルとデアリングタクトら強豪は今秋の国内専念を表明済み。前述の状況もあって、今年は参戦可能性のある日本馬はディアドラだけとなりそうだ。
ディアドラは昨年8月に英G1ナッソーステークスを制覇。その後はG1アイリッシュチャンピオンステークス4着、G1英チャンピオンステークス3着、G1香港ヴァーズ4着と善戦して昨年を終え、今年は2月にサウジアラビアのモハメドユスフナギモーターズカップを2着。一息入れて臨んだ7月の英G1エクリプスステークスは5着だった。
この戦績をどう判断するか。牝馬限定戦のナッソーSは2着馬メダーイーがG2勝ちどまりで、その後はG1ばかりを走ったとはいえ見せ場なく未勝利なように軽いメンバーだった。愛チャンピオンSはディアドラに先着したのがマジカル(G1を5勝の名牝)、マジックワンド(世界を転戦して好走)、アンソニーヴァンダイク(英ダービー馬)だったように骨っぽい面子。4着だったディアドラは脚を余した感もあり、この敗戦は評価できるものだ。
英チャンピオンSも得意とは言えない重馬場でしぶとく伸びた内容あるレース。とはいえ、この2戦ではいずれもマジカルの勝利を許した。そのマジカルは両レースの間に凱旋門賞にも出走して5着。ヴァルトガイスト、エネイブル、ソットサス、ジャパンに先着されたマジカルにローテーション上の有利がありながら連敗という事実は重い。