いやぁ、マスクをはずすと実に気持ちがいいですね。思わず、呼吸法を3回ほど繰り返しました。白隠禅師が教えるところの「内観の法」です。息を吐くときに臍下丹田(せいかたんでん)、腰脚足心に気をみなぎらせていくのです。

 そのとき気づいたのですが、こういう呼吸はマスクをしたままではできないですね。マスクをすると、体、心、命を整えるための自然な呼吸ができないのではないでしょうか。それは知らないうちに免疫力の低下を引き起こします。

 そもそも、マスクをはずすと気持ちよく感じるということが、マスクなしの方が免疫力が高いことを示しています。どんな療法であっても本人の気持ちがよければ、免疫力にとってプラスになるのです。

 厚労省も熱中症予防の観点から「屋外で人と2メートル以上離れている時には、マスクをはずしましょう」と呼びかけています。熱中症での死亡者の約8割が65歳以上の高齢者だそうですから(厚労省調べ)、ナイス・エイジングにとって重要な問題です。

 マスクをすれば安心と思い込むのではなく、マスクをするしないを、時と場合によって、各自がしっかり判断すべきです。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2020年7月24日号

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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