

社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第6回。
前回に引き続き医療に関する保障制度について、知っておかなければ大きな損をしかねない基本について説明します。フードデリバリーサービスなどの新しい働き方をする人も必見です。
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生活するうえで、大きな影響がある社会保障が健康保険。前回は、大きな病気やけがで多額の医療費がかかった場合の保障である高額療養費制度について説明しましたが、今回解説するのは仕事中のけがや病気の補償、労災保険についてです。労災保険は、思い違いをしている人もいますので、ここでもう一度、基本を確認しましょう。
■仕事中の病気やけがの治療費を全額補償する労災保険
労災保険は「労働者災害補償保険」の略称で、労働者が働いているうえでのけがや病気、障害、死亡について補償を行う保険制度です。実際に働いている時間はもちろん、通勤途中の事故などでのけがにも適用されます。この「労働者」の適用範囲は広く、一般の社員はもとより契約社員、パート、アルバイトの形態で働く人もすべて対象となります。労働時間の長さや勤務期間に関係なく、雇用されるすべての人が労災保険の対象です。
労災が適用された場合の治療費は、全額が労災保険の療養補償給付の対象になります。このため原則、自己負担なしで治療を受けることができます(ただし差額ベッド代や自由診療、最先端医療は適用外です)。労災保険は健康保険とはまったく別のもので、国が保険の給付を行います。このため健康保険証での治療は受けることができないのでご注意ください。
もし、労災対象であるのに、健康保険証を使用して治療を受けてしまった場合は、いったん健康保険組合等に全額返金(納付)を行い、その後、労災保険に治療費請求を行います。手続きが煩雑となり、さらに一時的に治療費の立て替えを行うことになるので、労災の場合はあらかじめ病院でその旨を伝えておいたほうが良いでしょう(労災として認定されなかった場合は、健康保険での治療となります)。