山崎さんは、57歳ですから、まだまだ若いじゃないですか。習い事でもいいし、趣味のサークルでもいいし、一人で楽しめることでもいいし、とにかく、娘さんとは関係のない楽しみを見つけるのです。

「私は自分でも人とのコミュニケーションがうまくない事はよくわかってるつもりです」と山崎さんは書いています。自分の娘だと、つい甘えて、言ってはいけないことを言う可能性が高くなると思います。でも、娘だからといって、許されることではありません。

 新しい人達と新しい関係の中で、コミュニケイションをもう一度作っていくことが、コミュニケイションを上達させることにもなると思います。

 何年先になるか分かりませんが、ずっと母親から連絡がなければ、そのうち、娘さんが心配して連絡してくるかもしれません。その時、上達したコミュニケイションでうまく会話できるかもしれません。

 いえ、ひょっとしたら、何年たっても、連絡はないかもしれません。

 それは結果ですから分かりません。ですが、毎日、娘とどうやって連絡を取ろうかと悩み続けるより、新しい人達や新しい楽しみに出会って、新しい関係に悩む方が、はるかに前向きだし、精神的にも良いと思います。

 山崎さんの人生は、娘さんがいなくても充分可能性があるはずです。逆に言えば、娘さんと連絡が取れなければ無意味な人生だ、なんてことは絶対にないと思うのです。

 山崎さんの人生は山崎さんのものです。娘さんの存在が決めることではありません。

 苦しいですが、娘さんのことはいったん置いておいて、山崎さんの新しい楽しみを見つけてみませんか?

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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