「生着すれば血液細胞が作れるように復活しドナーのリンパ球が腫瘍細胞を攻撃する移植片対白血病効果(GVL効果)もあります。けれども生着せずに失敗したり、移植片対宿主病(GVHD)という、移植したドナーの細胞が、他人の体と認識し、正常な細胞や臓器を攻撃してしまう大きな副作用に見舞われることがあります。移植関連合併症によって約2割の患者さんが死亡することもあり細心の注意を要します」(田中医師)

 通常、移植の適応は50歳以下とされるが、それ以上の年齢の場合も、現在ではミニ移植がおこなわれる。ミニ移植は、通常の移植よりも弱い移植前処置をおこなって移植する。

「ミニ移植は、造血の回復が早く、移植関連の合併症も減ります。そのため高齢者や合併症を持つ患者さんに適応できるのです」(同)

 半合致移植という、ドナーの確保が難しい場合におこなわれる移植法もある。移植にはHLA(ヒトがもつ白血球の型)一致が必須だが、その半分の合致でも可能な移植で、家族内ドナーの可能性が高くなる。

「副作用である移植片対宿主病を抑制するために移植直後に免疫抑制剤の投与が必要ですが、治療予後は、通常の移植と遜色なくなってきています」(同)

 さまざまな新薬の登場と、造血幹細胞の進歩により、白血病は死の病ではなくなってきている。

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
東京女子医科大学病院 血液内科教授 田中淳司医師
がん・感染症センター 都立駒込病院 副院長 大橋一輝医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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