ただし、チロシンキナーゼ阻害剤は、ずっと飲み続ける必要がある。薬によっては1カ月の薬価が高くつき、医療費が逼迫することになるため、休薬できるタイミングがないかどうかが臨床試験で評価されてきた。都立駒込病院副院長の大橋一輝医師はこう説明する。
「深い寛解(ほぼ根治に近い状態)を2~3年維持できている症例であれば、そのうちの5割くらいは休薬しても再発しないことがわかってきました。休薬した場合は、少なくとも半年間は毎月来院して遺伝子を調べ、経過観察が必要です。その間、再燃しても、チロシンキナーゼ阻害剤を再開すれば、多くの場合深い効果が見られ、再度休薬することも不可能ではありません」
慢性骨髄性白血病は、根治する、亡くならない病気となってきた。
一方、慢性リンパ性白血病は、白血球の一種のリンパ球のうち成熟した小型のBリンパ球が悪性化し、がん化した細胞が無制限に増殖し発症する。完全に根治することは難しいが、長期生存が可能だ。多くはゆるやかに進行するため、無症状の場合は経過観察をする。
進行期には抗がん剤の多剤併用療法をおこなう。
「近年、再発・難治性の症例について、イブルチニブとベネトクラクスという2剤が使えるようになりました。ベネトクラクスは急性骨髄性白血病にも使えるようになる可能性もあり、抗がん剤治療が困難な高齢者にとっての福音になるかもしれません」(大橋医師)
■高齢の患者にはミニ移植の選択肢も
白血病は治りやすくなったが、最後の砦となる治療は、やはり造血幹細胞移植だ。移植前処置として化学療法や全身への放射線療法をおこない、その後に健常ドナーから採取しておいた造血幹細胞を点滴投与する。
移植前処置は、腫瘍細胞をできるだけ減らし、患者自身の免疫細胞を抑制するためにおこなう。患者の免役力を低下させておくと、移植するドナーの細胞を拒絶せずに生着しやすくなるためだ。