林と同様に社会人入りした投手では広沢優(日大三→JFE東日本)が、現時点では最もプロ入りに近い存在と言えそうだ。190cmの大型右腕で2年夏に出場した甲子園では既に140キロ台後半のスピードをマーク。3年時は故障もあって伸び悩んだが、素材の良さは申し分なく、6月に行われたオープン戦では150キロもマークしている。大型だが意外に器用で指先の感覚も良く、コントロールに大きな問題もない。決め球となる変化球をマスターすることができればストレートの威力は更に増すことになり、再来年のドラフト上位候補となる可能性も十分にありそうだ。
林とともにU18侍ジャパンに出場した飯塚脩人(投手・習志野→早稲田大)、池田陽佑(投手・智弁和歌山→立教大)、熊田任洋(内野手・東邦→早稲田大)の三人はいずれも東京六大学でプレーすることとなった。この中でも早くから戦力として期待されそうなのが池田だ。チームは先発の柱だった田中誠也(大阪ガス)、手塚周(SUBARU)の二人が揃って卒業し、リーグ戦での実績があるのが中川颯(4年・桐光学園)という状況だ。ボール自体の力は申し分ないだけに、調子の波を小さくすることができれば、大学でも結果を残せる可能性は高いだろう。
高校野球で注目された選手が大学や社会人で苦しむことは多いが、逆に驚くような成長を遂げる選手も少なくない。今回は甲子園に出場した選手を取り上げたが、2年後や3年後に高校時代には無名だった選手がドラフト候補として浮上してくることにも期待したい。(文・西尾典文)
●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。