近年、世界中で増加していて、今後も増えることが予想されている近視。さらに近視の程度が強い「強度近視」も増加している。強度近視の人は、40歳ごろからさまざまな合併症を生じやすく、失明の危険性もあるため注意が必要だ。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、強度近視の合併症と治療について、専門医に取材した。
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強度近視による合併症には、主に「近視性網脈絡膜萎縮」「近視性脈絡膜新生血管」「近視性牽引黄斑症」「近視性視神経症」がある。従来こうした合併症に対する治療は難しかったが、その一部の合併症について、近年は効果的な薬剤の登場や網膜硝子体手術の進歩によって、治療が可能になってきた。
薬物治療で改善する可能性がある合併症が、近視性脈絡膜新生血管だ。脈絡膜には、網膜に栄養を供給する血管が多くある。脈絡膜新生血管とは、眼球の変形によって脈絡膜が萎縮していく過程で、脈絡膜から網膜の下に向かって「新生血管」という病的な血管ができて増殖する病気だ。
進行すると、重篤な視力障害が起きる。脈絡膜新生血管に対して14年に保険適用となったのが「抗VEGF療法」だ。網膜の中心部にある黄斑が傷つく「加齢黄斑変性」の治療法でもある。眼球に注射して薬を入れることで、新生血管の成長を促す「血管内皮増殖因子(VEGF)」の働きを抑える。杏林大学病院眼科主任教授の平形明人医師はこう話す。
■初期は薬物治療の効果が出やすい
「加齢黄斑変性の治療では、何度も注射を繰り返す必要があります。しかし近視性脈絡膜新生血管の場合は、初期であれば病変が小さいため、1、2回の注射で新生血管の活動を抑えられ、症状が改善することが多いことがわかってきました」
近視性脈絡膜新生血管の初期は「ものがゆがんで見える(変視症)」「真ん中が黒く見える」といった症状が出る。こうした症状があれば、早めに受診したい。