西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、楽天・涌井秀章投手らを引き合いに出しながら、一流選手に必須の「心技体」について語る。
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心技体。若い選手はどの順番で身につけていくべきかと聞かれたこともあるが、そんなものに答えはない。心に関していえば、鈍感力というか、何ものにも動じない心を最初から持っている選手はいるし、技術はあっても体力がない、そのまた逆の選手もいる。ただ、一つ言えることはこの三つすべてが整わなければ、どの世界であっても一流にはなれない。
逆に30歳を超え、ベテランになってきたときに一番大切なのは、体。そう思ったのは、楽天・涌井秀章の投球を見たからだ。人並み外れた量のランニングをし、下半身を鍛えている。ランニングの重要性を説いているのではない。34歳になっても衰えない練習量に裏打ちされる体力、100球超えても衰えることのない球威、責任感。その姿には恐れ入る。
技術的には、シンカーを小山伸一郎投手コーチから教わったという。だが、涌井の投球を見ていて思うのは、「シンカーがあるから」だけではない。打者1巡目に対しては、左打者の外角からストライクゾーンに入るスライダーで簡単にストライクをとる。特に序盤は内角への強い球は、ボールになってもいいからあえて厳しくいく。そうすることで、打者が感じるストライクゾーンを広げているよね。2巡目以降、打者はボール気味の球にも手を出すようになる。だから、序盤は調子が悪くても、勝負どころとなる中盤以降に力を発揮できる。心に関しては、140勝以上している涌井にあえて論じることもない。
先発投手なら、勝敗が決するまで投げさせてもらえる投手を目指さないといけない。それがエースである。巨人の菅野智之がなぜ、開幕から連勝を続けられるか。投手分業制の時代であっても、球数が許す限り、完投、完封を目指し、チームからも信頼を得ているからである。