特に打者3巡目に上位打線と当たるときに、どんな状態でいられるか。六、七回に迎えることが多いだろうが、そこを明確に意識し、逆算して1、2打席目を対戦できているか。セの菅野と、パの涌井。若い投手はここを見てほしいよね。

 マネをしろというわけではない。ただ、そういった投手が長年かけて「心技体」をどう鍛えてきたのか。無数にある成功、失敗から何を抽出してきたか。観察をし、時には聞いてほしい。

 私の古巣でもある西武には、高橋光成、今井達也というエース候補がいる。だが、ずっと、3巡目の壁にはね返される。先発で五回や六回で白星がついたって、それは援護点をたたき出してくれた打者のおかげであり、七回以降の重要な局面を抑えてくれた救援陣のおかげである。この2人を見ると、勝つときは「運」でしかない。初回から全力で行って、力尽きる。その繰り返しだ。

 西武には西口文也、豊田清と選手時代に一流であった投手コーチが1軍にいる。なぜ、高橋光や今井を一本立ちさせられないのか。喝だ! 西武の打線頼みの状況は何年も変わっていない。投手が育ってこないと低迷期を迎える。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝

週刊朝日  2020年9月11日号

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