2012年に全日本柔道男子監督に就任し、前回のリオ・オリンピックでは全階級メダル獲得と、日本の強さを世界に見せつけた井上康生さん。「出場する全選手の金メダル獲得」を目標に掲げる東京オリンピックが延期になった今、選手との向き合い方にも監督流の考えがあるよう。作家・林真理子さんとの対談でその率直な気持ちを語りました。
【前編/井上康生「シンプルに言えば『一本』の追求」 “JUDO”に勝つために】より続く
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林:井上監督はシドニー・オリンピック(2000年)で金メダリストとして頂点を極められましたが、お若いときから将来の指導者として期待されて、JOCからスコットランドに2年間派遣されたんですよね。
井上:えーとですね、柔道界は学閥というか、有名な強豪校にはそれぞれのシステムが強く構築されてるんですね。国士舘大学には斉藤仁先生を筆頭に鈴木桂治先生だとかが所属していて、私は東海大学なんですが、東海大学には(JOC会長の)山下泰裕先生とか、山下先生を育てられた佐藤宣践先生がいらっしゃいます。私の場合、山下先生、佐藤先生のアドバイスが非常に大きく影響して、海外留学という道のりも歩ませていただいたんだと思います。「将来、指導者としてどのようなポジションについたとしても、ちゃんと対応できる人間になりなさい。専門知識とか語学、コミュニケーションの仕方も学ぶ必要がある。多角的な視野で、いろいろな方たちと対等に対応できる人間に育ちなさい」ということで、英才教育の一つのプログラムとして組み込まれたものでした。
林:ほぉ~、すごいですね。今、大学(東海大)の先生もなさってるんですよね。私、本を読んで驚いたんですけど、オリンピックの代表監督って、お金の管理まで全部しなきゃいけないんですね。
井上:管理というか、国からの補助金とか、スポンサーから得られるお金をどのように強化費に充てるかとか、うまくバランスをとりながら年間の計画も立てなければいけないんですね。これから監督としてよりいっそう必要になってくる能力じゃないかと思います。