カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く連載「男と女の処世術」。今回のテーマは「夫婦間のコミュニケーションをダメにする構図」について。夫婦関係がうまくいかないとお悩みの方は必読の内容です。
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先日、足立紳監督の「喜劇 愛妻物語」という映画を見ました。
ストーリーよりも私が気になったのが、妻とセックスをしたい夫・豪太と妻・チカのコミュニケーションのパターンです。豪太はチカを説得してセックスに近づけたいのですが、その結果、チカの話に基本否定で答えます。
正確には覚えていませんが、
「いや……」
「でもさ、でもさ……」
「だけど……」
「そんなこと言ったって……」
というような言葉が多用されていて、半ば職業病でかなり気になりました。
以前、妻が口をきいてくれないのをどうにかしたいと言って、一人でお出でになった慎吾さん(職業不詳、40代前半)を思い出しました。彼も、その先にはセックスというのがあったようですが、さすがに口もきいてくれない人とセックスというのは難しいので、まずは話をしてくれるような関係になり、それから一緒に旅行に行けるようになって、セックスという深謀遠慮のお話でした。
実は、慎吾さんの話もすべて否定から入ります。
「奥様との会話がないっていうことなんですね」
とお聞きすれば、
「いや、全くないというわけではないですが、ほとんどないというか、事務的なことをたまにいうか言わないかぐらいで」
と答え、
「それは、しんどいですね。」
と言えば、
「いや、しんどいっていうか、何かいいアドバイスがないのかな、と思って」
「先が見えない感じがしますよね」
「いや、先が見えないというか、何を考えているのかわからないというか……」
というような調子です。
発言が「いや」から始まるので、なんとなく否定された気分になりますが、そのあとに続く話からすると、私の言っていることを否定しているどころか、肯定しているように思えます。
私は「とりあえず、いや、と否定から入りますよね。」と言ってみました。予想どおり、
「いや、いつも否定から入るってわけじゃないんですけど。」
と、「いや」から返されて平然としていました。