NTTドコモが提供するアプリ「はなして翻訳」もNICTの翻訳エンジンを使っているため、翻訳精度はVoiceTraとほぼ同じだが、電話で話した言葉を訳して相手に伝える「電話翻訳機能」がついているのがドコモならでは。対中国語翻訳力が高いのが、「百度(バイドゥ)翻訳」(Beijing Baidu Netcom Science & Technology Co.,Ltd)だ。中国最大手の検索エンジンが提供していて、中国語だけでなく、英語など28言語に対応している。アプリによって不得手な言語もあるので、自分に合ったものを選びたい。
企画書や資料など文書を翻訳したいときの強い味方が、翻訳サイトだ。ウェブページや文書ファイルをまるごと翻訳できるものもある。「Google翻訳」(Google)や「Microsoft Translator」(Microsoft)などは、世界的IT企業の強みを生かし、ウェブ上で集めたデータを活用して翻訳精度を高め、数多くの言語に対応している。NICTが提供する「みんなの自動翻訳@TexTra®」は、GoogleやMicrosoftにはない、日本語から中国語や韓国語へ直結するデータも大量に持っているため、精度が高い。また、翻訳精度が高いと最近話題の「DeepL翻訳」(DeepL GmbH)は、ドイツに拠点を置く企業が提供している。
「同企業が公開している独自の訳文検索エンジンを搭載したオンライン辞書『Linguee』はプロの翻訳者が多用しています。集めた質のいいデータをDeepL翻訳に反映することで、高い翻訳精度を実現しているようです」(森口さん)
翻訳アプリや翻訳サイトは無料で提供されているものも多いが、セキュリティーには注意が必要だ。
「無償版で投入したデータは活用されます。データが残って国外に出てしまう可能性もある。機密情報であれば有償版を使うべき」と森口さんは言う。
また得意とする言語や分野は異なるのでニーズに合ったものを使い分けることも大事。ポケット翻訳機の場合は「海外旅行に持っていったけど使えなかった」ということにならないように、対応地域や言語も確認しておこう。
(文/熊谷わこ)
※『AERA English (アエラ・イングリッシュ) 2020 Autumn & Winter』より