西村:学習の方法で言うと、公文でのパターン演習は、合う子と合わない子がいます。文字を殴り書きしているようなら合わない可能性が高いです。じっと座って同じことを繰り返す作業を嫌々やっている証拠だからです。だったら指を使って体を動かせるそろばんに変えたほうがいいかもしれない。そろばんは10進数の感覚もしっかり身につきますしね。

安浪:たしかに公文は合う、合わないがあるかもしれないですね。低学年のうちに計算力をつけておくことは大切だとは思いますが。

西村:低学年のうちは生活のすべてが勉強につながっていると考えたほうがいいです。例えば、子どもが言葉の意味を聞いてきたらすぐに「辞書をひいてみなさい」という親御さんがいますが、低学年のお子さんにはそれはあまりよくないと考えているんです。そもそも辞書の説明は抽象的な言葉が多く、子どもは納得感を持ちにくい。

安浪:それにいつもそう言われるとだんだん辞書をひくのがめんどうくさくなって、そもそも質問をしなくなってしまったり。

西村:そうそう。まずは「いい質問ね」から始めて、一緒に考える姿勢を見せてほしい。的確でなくても、手際が悪くてもいいので、親御さんの言葉であれこれ説明してあげる。そのほうが、子どもの中にイメージを作ってあげられますし、語彙や表現が増えることにもつながります。

安浪:基礎学力ということを考えていくと、大本はやっぱり「いかに豊富な体験をさせておくか」なのでしょうね。だからといっていろいろ連れ出せばいい、というわけでもないのが難しいところ。例えば、「うちは世界遺産にいろいろ連れて行ったのにちっとも覚えていない」とおっしゃったお母様がいて。バスの中で親はスマホ、子どもはゲームではダメなわけです。

西村:そうなんですね。連れて行くのであれば親が率先して楽しむことが先決で、大人が楽しんでいることを表現しないと子どもはくっついてきません。

安浪:低学年でも、高学年でも中学生でも一緒ですが、楽しいと思ったこと、好きなことに没頭しながら深掘りしていくなかで、コツンと壁にぶつかって立ち止まる。それを自分の頭で克服して乗り越える。そうしたトライ&エラーこそが、結局は学力をつけることになるのかなと思います。

西村:人間、うまくいかなければ工夫を重ねます。それが頭を使うことだし、体で学ぶことだし、それが勉強につながっていくわけですから。

(構成=AERA with Kids編集部)

※「AERA with Kids秋号」掲載のお二人の対談では、直前期に入った6年生の心構えも掲載しています。ぜひ参考にしてみてください。

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