秋になると各塾で始まる、中学受験を見据えた入塾テスト。とくに小学校3年生の親は「うちの子はどうする?」と思っている方も多いのでは?「AERA with Kids 秋号」では、プロ家庭教師として活躍する、西村則康先生と安浪京子先生が対談。お二人の意見が一致した、中学受験生を教えていて気になること、そして低学年がやっておきたいこととは?
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安浪:子どもたちを教えていて、以前から気になっていたのが基礎学力のことです。新しく教えることになった子の中には、塾に通ってはいるけれど学力が上がっていかないと悩んでいるご家庭もあって、そうした場合、多くは基礎学力が不足しているんですね。塾に通っているとは言っても、そもそも 大手塾はいきなり演習などから入ってしまって、一番やらなければいけない基礎を全部飛ばしてしまっている。そこも常々「由々しき問題」と思っていたんですけれど。
西村:授業システムがそうなってしまっているのですね。概念導入の授業があって、次に演習があってという順番でやるべきなのが、大半の塾はそうなっていません。たとえば生徒が質問にいくと「これはつるかめ算だから」で始める塾講師が本当に多い。「なぜつるかめ算と考えられるのか」という理由説明、もしくは子どもにつるかめ算と感づかせる導きがないのです。
安浪:本当にそうです。ですから問題は子どもにあるのではなく、教える側にある。西村先生や私のような家庭教師はそこの「教育の穴」を埋める仕事といってもいいぐらいです(笑)。
西村:私は基礎学力については、「基礎処理力」と「基礎概念力」の二つに分けてよく説明するんです。「基礎処理力」は、計算が早くできたり、図やグラフをさっと読み取ることができる力。繰り返しの学習でついていく力ですね。これはこれで大切です。「基礎概念力」とは、たとえば「8+5はなぜ13なの?」というような、理屈の部分を理解させること。学年が上がれば上がるほど、「なぜそうなのか」を納得する時間がとても重要になってきます。試行錯誤して考え、「なるほど!そうか!」という素直に心を動かす経験が必要です。