■50年続いている「クラスの日」
さて、冒頭で紹介した「クラスの日」とはいったい何なのだろうか? 中学部長を務める村野英治先生は、「クラスの日」は同校の伝統行事だと教えてくれた。
「調べてみると、『クラスの日』は1970年からおこなわれていて、今年で50年になります。『クラスの日』を始めた意図が学校史に書かれています。『クラス単位で生徒委員が計画実行のすべてを担当し、担任教師は助言を与えることとし、2名の教師が同行して1泊旅行、レクリエーションをおこなうもので、1人当たりの費用は制限内でおこなうこととした』と。いまと変わらないですね」
中1・中2の10月第2週か第3週にこの「クラスの日」が実施され、原則は1泊2日だ(今年はコロナ禍の影響で宿泊はしていない)。
「桐朋にはいろいろな行事があり、それぞれに委員があるんですね。春先に生徒たちは自分の担当する委員を決めるわけですが、その中に『クラスの日』委員があり、クラスで3人が務めることになります。その委員たちが候補地をリストアップして、クラスでプレゼンをおこない、みんなの承認を得るのです。なお、費用は1人1万9千円以内。時にはクラスメートの反対に遭って、行き先を変更することもありますよ」
聞けば、「クラスの日」委員は、行き先や内容を決めるだけではなく、バス会社や旅行代理店などとの直接交渉をおこなうこともあるとのこと。中には、業者を通さずにすべて自分たちで計画するクラスもあるらしい。
2019年度の「クラスの日」の一覧を見ると、秩父での陶芸体験や伊豆でのバーベキュー、草津の温泉めぐりなど、クラスごとに行き先も内容も違う。「クラスの日」委員が作成したパンフレット(しおり)を村野先生が見せてくれたが、見た目も内容も多種多彩である。
前出の高校2年の在校生は言う。
「ぼくらのクラスは中2のときにあえて『東京旅行』にしたのです。お台場の宿泊施設を利用して。そういえば、自分たちの住んでいるところって案外知らないよね……と。初日は浅草巡り。花やしきにも行きましたね。翌日はお台場のヴィーナスフォートに寄ったあと、ラウンドワンでは先生を交えてボウリング大会。そのまま貸し切りバスで新宿へ行き、『ルミネ the よしもと』でお笑いを堪能しました」