東大薬学部教授・池谷裕二、占い師・しいたけ(撮影/写真部・掛祥葉子)
東大薬学部教授・池谷裕二、占い師・しいたけ(撮影/写真部・掛祥葉子)
占い師・しいたけ.、東大薬学部教授・池谷裕二(撮影/写真部・掛祥葉子)
占い師・しいたけ.、東大薬学部教授・池谷裕二(撮影/写真部・掛祥葉子)

「なぜ占いにすがりたくなるのかは科学的に探究する余地のある大きなテーマ」と話す脳研究者・池谷裕二さん。占いを勉強し始めた理由の一つに、「コミュニケーションへの関心」をあげる人気占い師・しいたけ.さん。池谷さんの『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)刊行を記念して、そんな二人の対談が実現。科学者と占い師という一見、対称的な二人ですが、コロナ後の生き方について語り合いました。

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※【虹プロに見る“運のつかみ方”は? 脳研究者と占い師が語る】より続く

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しいたけ.:僕自身は、このコロナで、どれだけ資本主義の中で生きていたかを思い知らされました。仕事をして、その疲れを旅行に行ったり、おいしいものを食べたりすることで癒やしていたのが、(コロナ禍で)人にも会えず、ご飯も食べに行けず。その低刺激状態で仕事は続けていたものの、本を読む気にもならなかった。コロナは現代人が経験したことのない低刺激状態なんですよね。

池谷:ええ。

しいたけ.:でも、ふと思ったのが、今までは常に刺激状態で、コミュニケーションが重視されすぎていたんだなと。僕は今までもリモート生活のようなものでしたが、友人にしても、お客さんにしても、仕事をして夜遅くまで飲んで、常に新しいネタを仕入れないといけなかった人たちが、初めてちょっと休めたかもしれないと言っていました。情報の更新を止めることができたんです。

池谷:刺激過剰な社会でも、それを消化できる人ならば、特に問題はなかったですよね。それがゆえに、これまでの社会は、人付き合いのうまい人、社交性の高さを、人の価値として重視しすぎだったのかもしれません。

しいたけ.:そう思います。リモートが好きな人もいれば、嫌いな人もいるわけで、これからは、会社ですごい業績を上げている社員の顔を誰も知らないということがあってもいいと思うんです。出社したことがない、幻の社員がいてもおもしろい。

池谷:実際、すごく頭がいいのに人付き合いがうまくない学生が、オンライン会議になったことで、救われているんです。対面だと話せなくても、一人で黙々とやらせるとものすごい成果を発揮する。プレゼンも人前だと苦手だけど、オンラインであれば何百人の前でも話せるという学生もいます。今までむげにされてきた能力が、コロナ禍で有効活用されるのであれば、それはすごくいいことだと思います。

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