しいたけ.:多様性という言葉は便利すぎて、あまり好きじゃないんですが、そういうことですね。

池谷:はい。それには私たちに寛容さが求められるわけです。しいたけ.さんが「AERA」の連載で、家族が密に集まってしまって息苦しいという相談に対して、「小さい議会」が大切だとおっしゃっていましたよね。小さい議会って、とてもいい言葉だなと感激したんです。

しいたけ.:職場や家庭や友達といった小さなコミュニティーで、ルールについて議会を開きましょうということですね。たとえば、人と会うのが怖い人がいた場合、「1時間だけ会う」というようなルールを作ったらいいんじゃないかと思ったんです。そうやってルールを作ることで新しい一歩を踏み出すのが、これからの時代に必要になるんじゃないかなと。

池谷:小さなコミュニティーなりのルールがあって、それが息苦しくなったら、別の議会を開けばいい。それが世間の多様性というところですよね。境界を作ることでも、つながり方に濃淡をつけることでもいい。今後コロナが収束に向かうときに、元の社会に戻るのではなくて、新しいつながり方を考えられたらいいですよね。

(構成・大川恵実)

東大薬学部教授・池谷裕二(いけがや・ゆうじ)/脳の健康や老化について探究している。本誌連載「パテカトルの万脳薬」をまとめた『脳はなにげに不公平』(朝日文庫)も発売中。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。

しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。ウェブ「VOGUE GIRL」で「しいたけ占い」、雑誌「AERA」で「午後3時のしいたけ.相談室」を連載中。

週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋

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