──そのための課題は。
合格には国際数学オリンピックで入賞するなど高い実績がないとだめだと思われている。そうした実績がなくても、自ら考えて、学び、まとめた成果物が一定のレベルを超えていればいい。東大の先生が「本学で学ぶのにふさわしい」と判断すれば、合格できることを伝えていきたい。
――地方学生と女子学生の少なさが課題になっている。どう対応していく考えか。
推薦型選抜の入学者を見ると、一般選抜と比較して、地方や女子の割合が明らかに多い。今回の推薦型選抜から、各高校で推薦できる枠を「男女1人ずつ」から「合計4人、男女各3人まで」に増やした。地方学生や女子学生の入学者が増えることを期待している。
女子に関しては、一般選抜と推薦型選抜を合わせた女子入学者の割合が、これまで2割を超えたことがない、“女子2割の壁”がある。男性の意見しか聞かずに卒業すると、女性の意見の捉え方にバイアスがかかる恐れがある。そのためにも、女子学生を増やす試みは続けていきたい。
――『THE世界大学ランキング』では東大が36位。東大を蹴って、上位の海外大を目指す動きもある。どう見ているか。
順位は気にしていない。たとえば、評価指標に「学生一人あたりに資金をどれくらいかけているか」があるが、アメリカでは授業料が高いし、中国では国がお金を出しているため、評価が高くなる。東大も授業料を上げれば評価が上がるが、それにどれだけの意味があるのか。
一方で、評価指標の中では、東大の先生たちの論文の引用数が下がっているのは、注視している。世界では共同研究が主流だが、この少なさが引用数の低下につながっている可能性がある。今後、国際共同研究を増やしていく必要がある。
ただ、東大の研究力や教育力は、海外のトップクラスにもまったく引けを取らない。東大に学びたいことがあれば、そこは心配せずにきてほしい。
海外大に学びたいことがあれば、そちらに行けばいい。受験生の選択肢が増えているのはいいことだ。
■福田裕穂(ふくだ・ひろお)/ 東大理学部卒。大阪大助手、東北大助教授、同大教授を経て1995年から東大理学部教授、2015年に理学部長。17年から現職。
(構成/本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2020年11月6日号に加筆