大切なのは、目の前の問題に対しての直接的な正解を求めることではないはずです。

――実際には正解のない問題ばかりですよね。

 そうです。だって、「人生にはどんな意味がありますか?」と訊ねられたとき、どんな「正解」があるのでしょう。ただ「自分はこう思う」と言うしかありません。

 正解はわからないけど、そこに大きな問題があることだけはわかる。だから、問題がある場所まで行って、いい質問をしてみる。誰かに向かって、あるいは自分に向かって。その結果は、疑問が深まるだけかもしれない。そして、さらに前に進んでゆく。それが「知」であり、そんなものの集積が「文化」なんだと思います。そんな場所にふさわしい「教科書」を、これからも書いていきたいと思っています。

(取材・構成/朝日新聞 文化くらし報道部・滝沢文那)