そしてフォームで大きく変わったのが下半身の使い方だ。左足を上げた時に右膝が折れているのは今も昔も変わらないが、ステップした左足の踏み込みは高校3年から大学1年くらいまでが一番強く、安定していたように見える。これは大学2年の時に左股関節を故障したことが原因と言われている。そしてこの下半身の動きを上半身でカバーして投げ続けたことが右肩、右肘の故障に繋がったという見方もできそうだ。一昨年のオフには大学1年の頃のフォームを参考にして自主トレを行っている姿も報道されているが、結局は改善されないまま2年間が過ぎている。
ピッチャーが故障などをきっかけにフォームを崩してしまうことは珍しいことではない。藤浪晋太郎(阪神)もフォームを崩し、かつての状態には戻っていない。そんな時には良かった頃のフォームに戻せば良いのではないかという声も聞かれるが、そう簡単に戻せないのがピッチングフォームなのである。例えば斎藤も藤浪も高校3年時と現在では筋肉量も柔軟性も大きく異なっている。つまり体の状態が当時とは違うのだ。それで同じような動きをしようとしても、当然同じようには投げられないのだ。その時の体に合った最適なフォームを作り続けていく作業が必要なのである。
そうなると斎藤が目指すべき方向性も見えてくるのではないだろうか。良かった頃のフォーム、良かった頃の自分に戻すのではなく、今の状態でどう勝負していくかを考えていくべきだろう。斎藤の現在のストレートは140キロ台前半であり、プロではごくごく平凡なレベルにある。この状態で勝負するのであればフォームや変化球を変えていく以外に方法はないはずだ。
現在中継ぎで存在感を見せている高梨雄平(巨人)は大学の後輩にあたるが、社会人でサイドスローに転向して現在のような変則フォームにしていなければプロ入りすることもなかっただろう。サイドスローは一つの例としても、それくらいの大胆なモデルチェンジを迫られていることは間違いない。