50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。2月2日に迎えた70歳という節目の年に、いま天龍さんが伝えたいことは? 今回は11月15日開催された天龍プロジェクトの興行を振り返ります。
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俺の引退試合からちょうど5年目となる2020年11月15日、天龍プロジェクトの興行『革命伝承』を東京・後楽園ホールで行った。代表(※娘の嶋田紋奈さん)が選手やファンとコミュニケーションを取ろうと思いたって開催した興行で、ちょうど俺の引退5周年に合わせたんだ。当日はさまざまな団体から参加してもらった選手による全5試合+メーンイベントで天龍源一郎 V.S. オカダ・カズチカ(新日本プロレス)のトークバトルという、引退試合と同じ相手とのカードで、当日のことを順番に振り返っていくけど、まず感じたのは引退から5年経っていても、後楽園ホールを見ると気持ちが高揚するということだね。会場に到着してからは控室のモニターで試合の様子を見て、トークバトルの出番が近くなってくると、テンションが上がって、現役時代の試合前のような気分になったね。
控室で試合を見ていると、リングに上がって自分の気持ちを表現できるのは幸せだなと感じる一方で、それがうらやましくてやきもきしている俺がいたね。プロレスラーは自分の怒りや嫌なことがあっても、すべてリングで発散できるという特異な職業だよ。なにがあってもリングで発散して、感情をストレートに表現すればいい。これが演劇だったら、役者がイライラしてても感情を抑えなきゃいけないし、喜劇だったら自分が悲しくてもお客さんを笑わせなきゃいけない。プロレスは特異なエンターテイメントだと再認識したね。
さて、俺が試合を見ていて一番印象的だったのは、やっぱり鈴木みのる(パンクラスMISSON)だ。彼はからだが大きいわけではなく、何か特別なことをしているわけでもないんだけど、あれだけの選手がいる中で、お客さんの注目を一番集めていた。いろいろな団体の大きい選手や実力者と長年戦い続けてきたという自信があるんだろうね。何をやるのでもないけど、とにかくインパクトがあった。