現在は直接、取材をする機会がないため、想像することしかできないのだが、山田が残留を選んだ背景には、間違いなくドラフト前から「行きたかった」というチームに対する愛着があったはずだ。もしかすると、監督として自らを「引いてくれた」小川現GMに対して恩義を感じていたかもしれないし、「ミスター・スワローズ」としての自覚もあったのかもしれない。

 今シーズンは上半身のコンディション不良もあって7年ぶりに出場数が100試合を割り、打率.254、12本塁打、8盗塁と、目標に掲げていたトリプルスリーからもほど遠い成績に終わった。

 やはり打率3割・30本塁打・30盗塁を1つもクリアできず、チームも歴史的な大敗で最下位に沈んだ2017年は、最終戦が終わってクラブハウスに引き揚げる際に涙を流したこともある。だが、前述のとおりその翌年は、見事に3度目のトリプルスリーを達成してみせた。ヤクルトとの相思相愛で残留が決まった今、不死鳥のようによみがえる山田の姿を、多くのファンが待ち望んでいる。(文中敬称略)

(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。