2020年度から小学校で必修となるプログラミング教育。学校でのICT活用に関しては後進国の日本だが、良い授業を共有し民間の団体が協力すればプログラミング大国になる可能性もあると専門家は指摘している。AERA 2020年11月30日号では、日本のプログラミング教育を取材した。
* * *
シドニーに送った「自動灌水(かんすい)機」の機械モデルが日本からの遠隔操作で作動したとき、スクリーンを見つめる子どもたちから拍手がわき起こった。見守る教員や保護者の顔もほころんでいる。母親のひとりは、「教室でプログラミングして、オーストラリアにある機械を動かす。そんなことを、小学校で学ぶ時代がきたんですね」と、感慨深げに話す。
神奈川県相模原市立小山小学校5年3組の授業。今回が単元の5回目で、前回までの流れはこうだ。
5年の社会科で学ぶ「食料生産」と関連させて、オーストラリアの農業について調べた。広大な農地で、乾燥しがちだという気候条件を踏まえ、どのような支援をすればいいのか、アイデアを出し合って機械モデルを決めた。5年3組は自動で水をまく「自動灌水機」を選び、レゴブロックを使って機械モデルを製作し、プログラミングした。完成した機械モデルを実際にオーストラリアに送付。ところが、「雨が降っても水まきしてしまう」という不具合の報告が届いた──。
■問題解決の手段にする
授業にはさまざまな企業が協力しており、その一つが米大手ネットワーク機器開発会社のシスコシステムズだ。同社オーストラリア支社のエンジニアが、ビデオ会議システムを通じて小山小の児童とやりとりをした。
不具合の報告を受け、担任の平城慎也教諭が授業の冒頭、「何を改善したらいいと思う?」と問いかけた。子どもたちは意見を出し合いながら、天候や湿度に応じて水まきを制御するという結論に達した。プログラムをデバッグ(修正)してシドニーのパソコンに送信し、さらに遠隔操作で機械を動かすと、無事に作動。教室に歓声が響いた。