11月24日、大阪府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ふたたび飲食店への時短営業要請を決めた。対象となるのは、「キタ」「ミナミ」など大阪市を代表する繁華街で、酒類の提供や接待を伴う飲食店。昨年までインバウンド(訪日外国人客)や社用族で潤った「食い倒れの街」はどうなっているのか。女優業のかたわらキタで飲食店を営む女将が、苦しい胸の内を語った。
大阪市北区堂山町。JR大阪駅から歩いて10分ほど、新型コロナの流行前は深夜まで人通りが絶えなかった「阪急東通商店街」のほど近くに、その店はある。
「わたくしのふるさと、兵庫県佐用町の郷土料理『ホルモン焼きうどん』が名物の居酒屋を経営しています。これ以上のコロナ感染者増加を防ぐため、今回の要請に従うことを決めました」
こう語るのは、「テン」を経営する三枝雄子(51)さんだ。店は本来ならば午前2時までの開店しているが、11月27日から12月11日までの15日間は午後9時までの営業を余儀なくされた。ちなみに三枝さんは、NHK連続テレビ小説「まんぷく」や「水戸黄門」(TBS系)などの出演もある女優。サスペンスドラマで存在感を発揮し“サスペンスドラマの名脇役”と評されたことも。
「夜になれば“食い倒れの街”という言葉の通り活気ある場所だったのに、今ではこの辺りの人通りはまばらで数店に一つはシャッターが閉まったままです」
春以降、苦難の連続だった。
「3月の時点で客足は大きく減少し、4月には政府の緊急事態宣言を受けて営業自粛。人件費が払えないので、長年アルバイトをしてくれている後輩の女優やタレントたちに泣く泣く“暇”を出しました。5月以降は客席を減らしながらもどうにか営業を再開していますが、売り上げははっきり言って前年比7割減。3日連続で“ボウズ”だったこともあり、その時は悔しさと不安で目の前が真っ暗になったものです」
とはいえ、安心して飲食できる店にするため、消毒や検温はもちろん、テイクアウトを導入。飲食店仲間たちと共同でクーポン付きの「スタンプラリー」なども企画した。