セクハラがセクハラと理解されない日常で、声をあげた女性を全力でたたきつぶそうとするその拳の強さを思い知る。

「女は被害者、男は加害者という風潮」は、実は男性社会が作ってきたレイプ神話だ。逆説的だが、そういう“風潮”があるからこそ、女はいくらでもうそをつき男をおとしめられるのだという“神話”が再生産されてきた。

「女性はいくらでもうそをつける」という杉田議員発言の背後には、こういう被害者意識を深める男性たちのいら立ちがあるのだろう。

 加えて今の「風潮」を言うなら、被害者の訴える声をまずは疑わずに静かに聴く、ことである。それが今の国際基準の、“被害者中心主義”というものだ。もちろん、男女問わずに。犯された証拠を出せ、出せないなら犯されていないのだという論理で追い詰めることは、そもそも性暴力に無知であることを露呈するだけでしかない。

■ 女性議員1人以下の地方議会は45%

 女性議員がゼロ、またはたった1人の議会は日本全体で45%にもなる。宮古島市の石嶺さんは26人中一人の女性議員(当時)で、藍住町の西岡さんも16人中1人(当時)、日高市の田中議員は16人中2人のうち1人。新井議員もたった1人の女性議員だ。女性がいないことが、「あたりまえ」の極端な男性社会が日本の地方に根深くあり、深く根を張り続けてきた。その弊害が、今、少しずつ可視化されてきているのかもしれない。

 1日の草津町議会が散会したのは午後3時を過ぎていた。温泉は大好きなのに、入る気分になれずそのまま東京に戻った。

 帰路ずっと「傍聴席のヤツラ」という男性の声が追いかけてきた。あからさまな物言いに驚きながらも、でも、「ヤツラ」がいることが、この国の民主主義には大切なのかもしれないとも思う。中からも、外からも、こもった空気を入れかえ優しい風を感じるために、この国の窓をあけたい。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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