■ヨビノリ・たくみさん “大学レベルの授業”が社会人にも人気
2017年7月にチャンネルを開設し、23年1月時点で登録者数は96万2千人超。教育系チャンネルで、一際存在感を放つのが「予備校のノリで学ぶ『大学の数学・物理』」(通称ヨビノリ)だ。大学の授業や受験レベルの理系科目を講義形式で解説する。代数学・量子力学・宇宙など扱うジャンルは広く、研究室訪問などの動画もアップしている。
たくみさんは横浜国立大学を卒業後、東京大学の大学院に進んだ。そこで配信を始めたという。
「大学に入ってまず思ったのは『大学の授業はわかりにくい』ということ。理系の授業はただでさえ難解で、教える工夫をしないと学生は離れていってしまう。学部1年から6年間、塾や予備校で講師をしていたこともあり、予備校のように授業をすれば、必ず需要はあると感じていました」
研究職に就けなかった場合のリスクヘッジという位置づけで配信を始めた。だが予備校時代の教え子を中心に評判が広がり、登録者が急増。大学院を中退し、専業YouTuberとなった。
「今思えば相当思い切った選択だと思います。ただ、もし動画だけで食べていくのが難しくても、他の講師職でやっていける自信がありました」
うれしい誤算もあった。当初は大学生をターゲットにしていたが、「学び直し」を目的とした社会人の視聴者も多かった。
「50~60代の方からは『学生時代には理解できなかったことを知り、モヤモヤが晴れた』という感想もいただきます。卒業後も大学の学問に関心を持つ人は多いと気づかされました」
中高年世代にとって、YouTuberはまだなじみが薄い仕事でもある。親世代に理解してほしいことはあるだろうか。
「長く続いているチャンネルは、配信者に専門の知識や技能がある場合が多い。迷惑行為が取り上げられるなど悪いイメージもあるかもしれませんが、そういう人たちはあくまでも一部。あまり不安に思う必要はないとお伝えしたいです」
たくみさん自身、専門性を高める努力には余念がない。講義で取り上げるテーマで理解できない部分があるときは、わかるまで教科書を買い集める。華々しく見える仕事を支えるのは、日々の地道な頑張りだ。