最近はどうだろうか。

 2017年以降、両賞受賞者の大学出身者は次のとおり(上、下は上半期、下半期、短大を除く)。

◆芥川賞
2017上 沼田真佑『影裏』=西南学院大
2017下 若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』=岩手大
2017下 石井遊佳『百年泥』=東京大
2018上 高橋弘希『送り火』=文教大
2018下 上田岳弘『ニムロッド』=早稲田大
2019下 古川真人『背高泡立草』=国学院大
2020上 高山羽根子『首里の馬』=多摩美術大
2020上 遠野遥『破局』=慶應義塾大

◆直木賞
2017上 佐藤正午『月の満ち欠け』=北海道
2017下 門井慶喜『銀河鉄道の父』=同志社大
2018上 島本理生『ファーストラヴ』=立教大
2018下 真藤順丈『宝島』=文教大
2019下 川越宗一『熱源』=龍谷大
2020上 馳星周『少年と犬』=横浜市立大

 早稲田大の突出ぶりは見られない。大学進学率が5割を超えて10年以上経った。大学の数も750以上になったので、出身校の多様化が見られるのは自然な成り行きだろう。

 それを象徴するのが、芥川賞受賞の高山羽根子だ。彼女は出身校にまつわる話として、多摩美術大のウェブサイトで次のように語っている。

「いわゆる早稲田や慶應の文学部で創作文芸をやっていて、『すばる』や『新潮』の新人賞を獲る、というのとは違って、美大出身でスタートがSFだったりと土俵の外から来ているので、たぶん物珍しかったんだろうと思います(笑)。文体重視の世界とはまったく別のルートからやって来て、いきなり『これキレイじゃない?』って小説を出してきた、みたいな(笑)」(20年8月21日)

 多摩美術大は芥川賞受賞をたいへん喜んでいた。ウェブサイトでこう綴っている。

「3度目のノミネートでの受賞です。おめでとうございます!」(20年7月20日)
「小説『首里の馬』で第163回芥川龍之介賞を受賞した卒業生の高山羽根子さん(01年日本画卒)が、8月6日、八王子キャンパスを訪れ、建畠晢学長からお祝いの言葉と花束が贈られました。(略)芥川賞の受賞は本学初の快挙です」(20年8月6日)

 なるほど、芥川賞、直木賞は作家の出身校にとってもたいへんな名誉である。受賞者を輩出した大学はウェブサイトで喜びを表している(カッコはウェブサイトの掲載日)。

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