それでも業務は少しずつ改善されている。昨年春までは「なぜPCR検査を受けられないのか」「コロナを予防するにはどうしたらいいのか」といった電話対応に追われていたが、そういった電話は少なくなった。コロナ前は数人だった感染症チームの人数は、他部署や本庁からの応援、派遣の看護師や事務スタッフの雇用で、いまでは7倍になった。コロナの相談窓口や医療機関の紹介窓口など、業務の一部を民間のコールセンターに委託している。だが、現場の思いは複雑だ。

「自宅療養の患者さんに電話すると、呼吸の苦しそうな時があります。陽性者や濃厚接触者に電話していて、『不安そうだな』と思うときには話を聞きたいんですが、時間がない。自宅で亡くなった方を思うと、もっと聞いてあげられないかと胸が苦しい。日々の仕事で手一杯で感染を止められない現実に、正義感がある人ほど燃え尽き、やめる人がいてもおかしくない」(女性)

 女性が働く保健所では1月下旬になってから感染者が減少傾向にあり、1人が処理する発生届も、1日あたり1枚に減った。

「自宅療養者や濃厚接触者の健康確認は、派遣の看護師や職員と分担しているのですが、体調が悪い自宅療養者の電話を回してもらえる余裕が出てきました」

 都市部の保健所では業務を効率化しようとする動きが進んでいる。医療機関、高齢者施設など、重症化リスクの高い人が集まる施設で感染が確認された場合は、原則、従来通り行動履歴の調査をするが、一般の感染者は行動履歴の調査をしない。厚労省も昨年11月20日に優先度をつけて調査することを推進する通知を出した。

 神奈川県は1月9日以降、濃厚接触者の調査を大幅に縮小。神奈川県医療危機対策本部室の小野聡枝グループリーダーはこう話す。

「以前は発生届が出た当日に陽性者に電話できないこともありましたが、一般感染者への行動履歴の調査をやめたことで当日中にフォローできるようになりました。病床が埋まり医療が逼迫するなか、重症化しやすいハイリスクの方への対応が最重要課題です」

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