■過渡期のまま40年
入試の日程を成績開示に合わせ変更するには協議が必要だ。現行の日程の中で可能にする手立てとしては、出願のオンライン化が考えられる。多くの大学が既に導入しているが、成績通知もオンラインでできる。
さらに解答を紙のマークシートからコンピューターへ変えれば採点期間も大幅に短縮できる。実際、大学入試センターではコンピューター化への研究を進めているが、「受験者用の端末確保やその費用、試験会場の均質なネットワーク環境の整備など課題は多い」と担当者は言う。
自己採点で個別試験に出願する制度は共通1次開始以来、約40年続くが、公的に議論され変更されたときが1度だけあった。1987年の共通1次だ。このときは自己採点で出願先を決めるのを避けるため、共通1次実施前に大学に出願する方式がとられたが、大量の門前払いと定員割れが発生するなど問題が多く、1回でとりやめになった。
大学入試学が専門の倉元直樹・東北大学教授は言う。
「これまでは出願前の成績通知を実現する手段がありませんでしたが、今はオンライン化で可能性が出てきています。中国の全国統一入試では、試験前に大学に出願する方式から自己採点方式の過渡期を経て、受験生に得点が通知された後に出願する制度に移行したと聞きます。日本はいわば過渡期のまま40年来てしまったと言える。受験生には、情報をきちんと持って意思決定する『インフォームド・ディシジョン』の権利がある。いつまでも先送りはいけません」
(編集部・石田かおる)
※AERA 2021年2月15日号