勝利の呼び水ならぬ“呼び肉”となるか。東京六大学リーグ46連敗中の東大野球部。元巨人の桑田真澄氏(45)を特別コーチに招くなど、チームの強化を図る中、春のリーグ戦開幕を3日後に控えた4月10日夜、野球部寮の「一誠寮」(東京都文京区)で、勝利のすき焼きパーティーを開催した。
参加したのは同校野球部OBの浜田一志監督(48)やマネジャーらスタッフ11人と、2~4年生の選手39人。広さ15畳ほどの食堂で4つのテーブルに分かれ、鉄鍋で煮込んだ高級国産牛を、歓声を上げながら味わった。
「普段の寮食はカレーや鶏肉料理が多いのでめちゃくちゃうれしい。パワー出ます」(初馬眞人投手、3年)
「量も多いし、割り下との相性も抜群。最後の年に幸せです」(藤倉皓一郎外野手、4年)
実は、寮ですき焼きパーティーが開催されるのは20年ぶり。かつてはOBや企業からの寄付金がタンマリ入り、試合前夜には必ず豪勢な“肉会”が開かれ、士気を高めていた。しかし、バブル崩壊で寄付が激減し、伝統の行事も1993年を最後に中止。この影響からか、成績も低迷した。
チームワーストタイの70連敗も見えてくる今、浜田監督の選手時代のチームメートたちが立ち上がった。大企業の役員や中小企業の社長となったOBを訪問するなど、資金集めに奔走。アベノミクス効果もあってか、瞬く間に40万円が集まり、先月、野球部に寄付した。春秋のリーグ戦の試合の前に毎回、すき焼きが振る舞われるという。89年卒の江口夏郎氏は言う。
「僕らのころは寮に牛肉があるのが普通でした。OBの方々にお世話になった分、後輩に恩返しをしたい。すき焼きで絆を深め、チーム力が上がれば幸いです」
10日のパーティーでは、先輩が後輩に肉を取り分けたり、ピッチングについて意見交換したりする姿も見られた。桑田氏とともに特別コーチを務める元中日の谷沢健一氏(65)は言う。
「研究などで忙しく、練習で全員がそろわないことも珍しくはありません。だからこうした、全員が集まっての肉会は非常に有効。左右の柱となる投手も成長しているし、今年は違った姿を見せられると思います」
13日に行われた開幕戦。法大に1対10で完敗したが、中盤までは同点で進むなど粘りもみせた。20年ぶりの伝統復活で、念願の白星をもぎ取る日も近い?
※週刊朝日 2013年4月26日号