「メンター(mentor)」は「信頼のおける師」とでも訳そうか。13歳の頃に出会ったユーミン、40歳で出会った河瀬直美に続き、3人目のメンターが彼女だと、レスリーは断言する。
「人権のこと、婚姻の平等について真剣に考えるようになった。彼女はパワフル。これから本気で、どうやって現状を変えることができるのか、勉強したい」
新たに進む道を、ジョシュアが照らしてくれたかっこうだ。
■子どもの未来のために
初来日から30年を前に、レスリーが今、節目の企画として立ち上げているのが、「We Are The Love」というプロジェクトだ。膨大な撮影写真から選び抜き、「自身の集大成」と呼ぶべき600ページに及ぶ写真集を制作、収益の一部を東京・北区赤羽の児童養護施設に寄付する。そのためのクラウドファンディングを、現在実施中だ。
これまでも東日本大震災をはじめ、数々のチャリティー活動に奔走してきた。
「僕、子どもの写真はいっぱい撮ったよ。でも、家族が幸せな人たちばかりだった。意外にも、親がいない子どもを撮ったことがなかった」
レスリー自身、女手一つで育ててくれた母を13歳で亡くし、孤児院に入った。その時に名曲「We Are The World」と出合い、勇気づけられた経験がある。
「写真家という生き方で生み出した作品を集め、本を1年間かけてつくる。子どもたちの未来に役立てたい」
22年秋には、児童養護施設内にアートスペースを設け、アーティストによるパフォーマンスを披露していく計画だ。親のいない子どもたちのために、衣食住の支援のほかにも、文化やアートにふれる機会を提供するサポートがあるべきと考えているからだ。アーティストたちの愛を届けたいという。
「日本は愛する国です。僕にとっては故郷。僕を育ててくれた国。いっぱいの出会いがあって、今の自分があります」
ジョシュアと出会い、生きる意味を改めて知った。100歳まで生きるとしたら、自分は日本に何を与えられるか。そんなことを模索するようになった。
「世界中の人が尊敬して、愛する素晴らしい国になってほしい。小さな力だけど、責任感と希望を思って、僕が力になっていけたらと思っています」
愛する人と共に歩みながら、レスリーは渋谷で、日本社会の未来を担っていく。(ライター・加賀直樹)
※AERA 2021年2月22日号