飽食の時代を生きる現代人にとって、健康や美容は大きなテーマ。だが、実は少なくとも大正時代から、そうしたジャンルへの関心は高く、週刊朝日の99年間を振り返ると、現在と同様に多くの記事を載せている。
創刊した1922(大正11)年には、早速、若返りの極意を書いた連載「所謂(いわゆる)若返り法に就(つい)て」が登場。好評だったようで、「再び若返り法に就て」「新若返り法」と続く。
この時代の記事について医療制度に詳しいニッセイ基礎研究所主任研究員、三原岳さんはこう分析する。
「大正時代は大衆化が進んだ時代。今に通じる価値観があったので、美容や健康など、暮らしを豊かにする記事が多かったのではないか」
若返りというと美容のイメージが強いが、記事では加齢で動脈硬化が起こることを指摘、むしろアンチエイジングに近い内容だ。
「若(も)しお前さんが酒色に耽溺(たんでき)し、贅澤(ぜいたく)と怠惰の擒(とりこ)となつて、不規則な擒生活を續(つづ)けるならば、お前は生(うま)れながらに得たる天然の尊い権利を、塵芥(ごみ)箱の裡(うち)に捨てるやうなものだ」と忠告した上で、「朝起きたら伸びをし、深呼吸をする」「過食はしない」「頭と歯を清潔にする」。
現代と、表現に違いはあるが、内容は変わらない。要は、不規則で不摂生な生活をしないように、ということだ。
一方で、美を追求する女性に向けた記事も。翌年、「肉體(にくたい)美運動法」として前屈や腹筋運動、腕立て、背中を反らす運動などが載っている。
ダイエット企画もすでにあり、記事では「安全に痩せる方法」を紹介(25年)。やせたほうがいいのは、「肥(ふと)っているとどうしても体を動かすのがおっくうになる」「通じが悪くなり、便秘が起こる」「血の巡りが悪くなって、骨盤に充血を起こす」からで、気になるやせる方法は、「食後1時間にレモン汁を搾って砂糖水に混ぜて飲む」。1日1個から始め、20個まで増やす。こうすると10~15キロ体重が減るらしい。胃が痛くならないか気になるところだが……。