メジャー2年目のレンジャーズ・ダルビッシュ投手は、4月24日(日本時間25日)に行われたエンゼルス戦で6回を3安打無失点に抑えて、早くも4勝目を挙げました。4月2日の今シーズンの初登板では、あわや完全試合という快投を見せたことは記憶に新しいところですが、19日のマリナーズ戦でも日米通算1500奪三振を記録。メジャーでさらなる進化を遂げるダルビッシュ投手にこれからも目が離せません。



 ダルビッシュ投手と言えば、トレーニングはもちろん体調管理に対してもストイックなことで有名です。食事にもとても気を使っており、コンディショニングの一環として、ファスティング(断食)を取り入れたことで知られています。



 ダルビッシュ投手だけでなく、今では多くのプロ野球選手がファスティングを取り入れているようですが、プロ野球界で初めて本格的にファスティングを取り入れたのは、ダイエーや巨人のエースとして活躍し、47歳まで現役を務めた工藤公康氏。



 工藤氏がファスティングを始めたきっかけは、1988年に4勝8敗と成績が大きく下がったことだったとか。工藤氏はその原因を毎日の暴飲暴食からくる「内臓疲れ」だと実感。それが心身の不調につながり、ボールに力が乗らなくなったと考え、胃や腸を休めることで内臓をリセットするためにファスティングを行ったそうです。



 医学博士であり、アンチエイジングの権威として知られる白澤卓二氏は、工藤氏との共著『40歳から進化する心と体』の中で、ファスティングの効用を「人間の細胞にある利用されてないゴミのようなたんぱく質を大掃除する効果があり、それが健康や長寿につながる」と説明しています。



 しかし、肉体を酷使するアスリートにとって、食事は大事なエネルギー源のはず。ファスティングで食事を抜いたりしたら、試合で力が出なくなくなったりはしないのでしょうか? 



 本書によれば、工藤氏はファスティングをしている間、何も口にしないわけではなく、水と酵素ジュースは取っていたといいます。また、シーズン中は登板した翌々日の休養日に1日行うだけで、本格的に行うのはシーズンオフ。その時は、一週間近く水と酵素ジュース以外一切取らないのだとか。また、酵素が含まれる発酵食品は、ファスティング中でなくても積極的に取っていたとのこと。



私たちはつい、疲れがたまると栄養を取ることを考えてしまいがちですが、先の白澤氏は医学的な立場から「いらないものを出してしまうことのほうが大事」だと、ファスティングの効用を説いています。



 実際、1990年以降、工藤氏は復活し、成績も急上昇。西武、ダイエー、巨人で日本一に貢献して"優勝請負人"と言われたのは周知のとおりです。とくに注目すべきは、引退年齢の平均が29歳と言われる厳しいプロ野球界で、47歳まで現役を続けられたこと。しかも41歳、42歳のシーズンには2年続けて10勝以上を挙げるという、当時のプロ野球記録を作りました。



「工藤さんは非常にうまく体の変化に気づいて対処してきたから長く現役を続けることができたのでしょう」と白澤氏。「40歳までの体は天(親)からの贈り物。それ以降は自分の責任」と白澤氏が言うように、アラフォーの男女は、将来を考えて食生活を見直すいいタイミングなのかもしれません。