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週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「心筋焼灼術」の解説を紹介する。
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生活習慣病が原因で発症しやすい不整脈だが、加齢とともに発症の頻度は高まる。不整脈には、脈拍が速くなる(1分間100回以上)「頻脈性不整脈」と、脈拍が遅くなる(1分間50未満)「徐脈性不整脈」がある。本記事では、頻脈性不整脈の約8割を占める、心房細動という不整脈を取り上げている。
心房細動は、心臓の部位・心房において、心臓を拍動させ収縮を司る電気的興奮が異常をきたす病気だ。心房が収縮せず、1分間に約500回痙攣するため、心房内に血栓ができてしまうことがある。血栓が脳の血管へ流れ、詰まると脳梗塞を起こす怖れがある。
また、心房細動を放置して長く続いてしまうと、将来、心臓の機能が低下して、心不全になる可能性もある。
ごく早期の心房細動であれば、血栓ができるのを抑える抗凝固薬に加えて、抗不整脈薬で心房細動発作を予防できるが、薬物療法では進行を抑えられない場合がある。
そのようなケースにおこなわれるのが心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)という治療法で、不整脈の発生に関係する部位を焼灼する。太ももなどの血管(静脈)を通して電極カテーテルを心房内に送り込み、異常な電気信号を発する部位を焼灼して脈拍を元に戻す。
横浜市立みなと赤十字病院の山内康照医師は、「従来は、患者さんに息苦しさ、動悸などの心房細動の症状が現れていない場合は、薬物療法で様子を見ていました」と話す。
しかし、最近発表されたカテーテルアブレーションと薬物療法の有効性を比較検討した大規模臨床試験の結果では、カテーテルアブレーションをおこなったほうが心不全や脳梗塞の発症率は少なく、生存率も高いことがわかった。