3月26日に契約が決まり、エースナンバーの背番号18が与えられた。「同じテスト生だったバッキー(阪神-近鉄)よりスピードがある。それ以上は活躍してくれるだろう」と中西太監督から期待されたスノーは「日本の野球界は全然わからないけれど、まあ15勝もすれば、球団は文句がないだろう」と胸を張った。
ところが、約1カ月間、調整を続け、4月26日のイースタン、ヤクルト戦で初先発初登板が決まった直後、スノーは2カ月分の給料を貰うと、ホテルを無断でチェックアウト。そのまま姿をくらましてしまう。
同30日になっても行方がわからないことから、球団は選手契約を解除するとともに、野球協約に基づき、パ・リーグに失格選手として届け出た。三原脩球団社長は「こういった男は、一度は謝罪しても、同じ過ちを繰り返すものです。それだけに、失格指名選手の申請をしたわけです」と沈痛な表情で語った。
5月2日、スノーがすでに帰国し、サンフランシスコにいることが判明する。蒸発の理由は、わからずじまいだった。
1試合も登板することなく、職場放棄でクビになった外国人は、あとにも先にもスノーだけである。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。