子育てには「女の子」「男の子」というステレオタイプが入り込みがちだ。習慣的に、無意識に、大人が「枠」を押し付けてしまっていないか。何より、「人を大事にする」意識をちゃんと持てているか。ジェンダーバイアスについて取り上げたAERA 2021年3月15日号の記事を紹介する。
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「うるさい女だなぁ」
娘に対して夫が何の気なく発した一言。でも、いちいち訂正するようにしている。
「そこに女は関係ない。うるさいなぁでいいでしょ」
夫の言動が娘に対して無意識のジェンダーバイアスを植えつけないように、という配慮だ。都内在住の40代女性が言う。
「夫は森喜朗氏と同様に、何がいけなかったのかも理解していないと思うけれど、娘には『これは受け入れなくていいのだ』と理解してほしいんです」
夫は家事から逃れるために「女性の仕事でしょう」と言い放つこともあり、事あるごとに、
「我が家ではおうちのことはみんなで分担します。(家事は)おうちに住んでいる3人の誰がやってもいいこと」
と娘に言って聞かせている。
■無意識に再生産される
とはいえ夫自身も本気で「家事が女性の仕事」だと思っているわけではないようだ、と女性は夫を見ていて感じる。
「自分がやるのが面倒なだけ。でも大人として『やりたくない』とは言えないから『だって女性の仕事だから』と身近な言い訳に飛びついているんだと思う」
昭和オヤジのように、本気で家事が女性の仕事と思うほど重症ではない。それでも。日常の端々にふとしたときに表れるそれを、娘に背負い込んでほしくないと女性は思っている。
「適当なトーク」として無意識に再生産されるバイアスについて、著書『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』で指摘するのは漫画家の田房永子さんだ。例えばママたちが集まった場で「女の子はこわい」というトークになることは珍しくない、と田房さんは指摘する。
《「女の子はハッキリ物言うからこわいよね」とか「露骨に意地悪したりするのは女の子。男の子は単純でかわいいけど」とか(中略)。それは意識化されないまま無害を装ってティータイムにあっけらかんと表出する。そしてコミュニケーションの中で消費されていく》